自衛隊は、危険だからオスプレイの導入を止めていた、という事実をなぜ伝えない。
以下、東京新聞【私説・論説室から】様より。
正しい判断だったと思う。一九九〇年代前半、海上自衛隊は開発中だった米軍の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの導入を検討したが、「ふさわしくない」として見送った。
当時、海自は海上救難に使う大型飛行艇US1の後継機選びを始めていた。US1は海に着水して遭難者を救出する。ただ、波が高いと降りられない。ヘリコプターなら波に関係なく作業できるが、固定翼機のように高速で長い距離を飛ぶことはできない。
欠点を打ち消すと期待されたのがオスプレイだ。主翼の両端にあるプロペラの角度を変えることで、離着陸時はヘリに、上空では固定翼機に変身する。
海自は調査員を米国に派遣した。当時を知る幹部が言う。「結論はバツでした。ヘリモードで下に吹きつける気流がすさまじく、救難を待つ人が窒息する」
二〇一〇年五月、米ニューヨークのデモ飛行でのこと。高度を下げたオスプレイが木々をなぎ倒し、十数人の観客がけがをした。猛烈な熱も襲った。沖縄の普天間飛行場に配備されたオスプレイが緊急着陸した場合、同じ場面が再現されるのは間違いない。
導入を断念した海自は大型飛行艇US2を開発した。飛行艇は「武器」とみなされておらず、東南アジアのブルネイから購入の打診があった。一機百二十五億円の高価格が障害となり、輸出が実現しないのが残念ではある。 (半田滋)