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「六ケ所」延命の細野報告書 他国の核燃料再処理も (東京新聞)

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再処理工場を死守すれば、原発も生き残り、原爆保持も可能、ということか?
以下、東京新聞の記事を日々坦々さんのブログより。

(東京新聞「こちら特報部」8月3日)

 将来の原発比率が議論される中、青森県六ケ所村にある日本原燃の核燃サイクル事業の見直しも避けて通れない。使用済み核燃料を再処理する工場が未完成のなか、「国際化」の名の下に延命策を打ち出したのが細野豪志原発事故担当相に提出された私的報告書だ。事業の抜本改革を求める一方で、新たに他国の使用済み核燃料の受け入れにも言及している。 (小坂井文彦、上田千秋)

 再処理工場の今後をめぐる細野ペーパーと言われるのが、「核燃料サイクルの検証と改革」と題した中間報告書だ。

 まず、その内容とは-。「国が主体的に核燃サイクル事業についての議論をリードし、改革を大胆に進めるべきだ」と主張する。再処理工場は着工から十九年、高速増殖炉もんじゅ(福井県)は二十七年たつが完成していない。それぞれの施設を運営する日本原燃と、日本原子力研究開発機構(JAEA)の経営体制を検証し、事業体制を刷新させる必要を説く。

 さらに「核燃サイクルの国際化」をうたっている。「国際的な核不拡散と原子力の平和的利用の観点」から、韓国や、ベトナムなど新規導入する国の使用済み核燃料の再処理を六ケ所で請け負うことについても検討することを求めている。

 この報告書は、細野原発事故担当相の私的諮問機関「核不拡散研究会」が五月下旬にまとめた。代表は元外交官で、国際原子力機関(IAEA)理事会議長も務めた遠藤哲也氏(77)だ。取材で訪ねると「昨年暮れ、細野さんとの議論で、核燃サイクル事業の国際化を提案したら、『国際化を中心に考えてほしい』とお願いされた」と話す。

 今年初め、専門家や学者ら三人のメンバーとともに研究会を発足させ、最初に核燃サイクルの是非を検討したという。
 「使用済み核燃料を再処理しない直接処分も結構だが、絵に描いた餅のような話。日本のどこに直接(最終処分で)埋めるというのか」
 その結果、核燃サイクル事業の推進を前提とした上で「六ケ所も、もんじゅも、どうも足腰がなっとらん。電力会社出身の雇われ役員は、自分の会社という意識が希薄」と、日本原燃とJAEAの問題を分析し、国が経営改革に関与することを提言したと明かす。
 
「国際化」の視点については「日米原子力協定があるため、国際化するには米国の同意が必要だ。技術を蓄積したい韓国も六ケ所での再処理を簡単には容認しないだろう。青森県の合意も必要で、ハードルは極めて高い」。一方で「発展途上国を中心に原発が増え、使用済み核燃料の問題がやがて深刻になる。国際化に積極的なIAEAを巻き込めば、可能性はある」とみる。

 福島の原発事故後、「原発ゼロ」を求める国民は多いが「既にある使用済み核燃料の処理の問題は残る」として再処理工場を動かさないことは非現実的と説く。また、「米政府の猛反対を押し切り、核兵器保有国以外で、日本だけが再処理を許された。再処理をする権利を手放したら、二度と戻ってはきません」とも。

 脱原発を求める声が強まっているなか、「国際化」は核燃サイクル継続のための「理由付け」になりうるのか。
 六ケ所が他国の再処理を請け負うと仮定した場合、真っ先に想定される東アジアの国々の事情はどうなっているのか。
 二十三基の原発が稼働する韓国。二〇三〇年までにさらに二十基近くを建設し、原発の発電比率を59%に引き上げる予定だ。使用済み核燃料の処理が課題になっており、韓国の通信社・聯合ニュースは先月、原発運営会社「韓国水力原子力」が自国で再処理を行えるよう、米国に求める方針を固めたと報じた。

 韓国は米国から核燃料のウランを輸入しているため、使用済み核燃料の扱いは一四年に期限切れとなる米韓原子力協定で決めることになる。自国での再処理が実現すれば、韓国には(1)核燃料を自国で生産できる(2)核開発を進めている北朝鮮へのけん制になる-といったメリットがあるとみられるが、米国は核開発の可能性などを懸念して難色を示している。

 中国では十五基が稼働。一五年までに二十六基を建設し、計四十一基となる。再処理は独自に行う考えで、フランスのアレバ社と共同で再処理工場を建設する計画を進めているという。
 六基がある台湾、日本が原発を輸出することが決まったベトナムなど処理を依頼する可能性のある国や地域はありそうだ。だが、六ケ所の再処理工場は約二兆二千億円を投じながら、本格運転のメドは立っていない。

 日本原燃は先月二十七日、再処理で出る高レベル放射性廃液をガラスで固める最終試験が終了したと発表した。トラブル続きで技術的に難しい課題もようやく解決されそうな状況だが、目標の十月の稼働は難しい。使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを利用するMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料工場も建設途上だ。

 さらに、再処理そのものの先行きも不透明だ。政府は、将来の原発比率を(1)0%(2)15%(3)20~25%の三案から選択する方針を示している。(1)の場合は、再処理工場を存続させる理由はなくなり、(2)と(3)では再処理と直接処分の併存になる公算が大きいとみられる。

 他国分の再処理の可能性について青森県原子力立地対策課の大沢隆夫課長は「六ケ所は、国内で出た使用済み燃料を再処理する場所という認識」とだけ話し、日本原燃東京事務所広報グループの伊藤滋宏部長も「現在、再処理工場の完成に向けて取り組んでおり、全力を傾注したい」とする。
 日本はこれまで、多額の費用を払って英仏に再処理を委託してきた。事業が行き詰まるなか、逆の立場で稼ごうとしているとの見方も出ている。

 ジャーナリストの竹田圭吾氏は「破綻同然の核燃サイクル延命のために出てきたのだろうが、海外展開というのは当然、浮かぶ発想。数基しか原発を持たない国々は自国で再処理をやっても採算が取れないので、ビジネスとして成立する可能性がある」と話す。

 「技術的に成り立つ裏付けがないのに、無責任に受け入れてどうするのか」と批判するのは、原子力資料情報室の沢井正子研究員だ。「原発の輸出で再処理をセットにして売り出せるという考えがあるのだろうが」としつつ、こう訴える。
 「再処理で生まれるプルトニウムを相手国が持つことになり、核不拡散の観点からも問題が多い。自国の使用済み核燃料の再処理も、福島の事故の処理も進んでいない状況でこんなことを言い出しても、混乱を増大させるだけだ」

<デスクメモ> 官邸前デモや集会で脱原発や再稼働の撤回を求めるプラカードが揺れる。その中にたまに六ケ所の文字が見える。先日話を伺った音楽家の坂本龍一さんの脱原発活動のきっかけが再処理から出る放射能汚染の問題だったという。他国分の再処理に国民はどう反応するのだろうか。今後も追っていきたい。(呂)



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