Quantcast
Channel: 無心
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2344

小出 裕章・悲惨を極める原子力発電所事故―終焉に向かう原子力(第11 回)講演

$
0
0
 
4月29日に明治大学で行われた小出裕章氏の講演よりの抜粋です。是非全文を転載元よりご覧ください。

悲惨を極める原子力発電所事故―終焉に向かう原子力(第11 回)講演

  推進派も恐れる巨大事故と保険
         略
  原子力推進派が取った対策
   ①破局的事故は起こらないことにした
          略
   ②電力会社を破局的事故から免責した
          略
   ③原発を都会には作らないことにした
          略
 そして、実際に、原子力発電所は一つの例外もなしに、過疎地に押し付けられました。
 2007年 7月16日に事故を起こした柏崎・刈羽原発(7基、821万 kW)は東京電力の原発ですが、それは新潟県にあり、東北電力の給電範囲です。そして今回事故を起こした福島第1原発(6基、470万 kW)、福島第 2原発(4基、440万 kW)もまた東北電力の給電範囲です。東電は、自分の給電範囲に原発だけは作ることができなかったのでした(図6参照)。関西電力も同じです。 11基(980万 kW)の原発を自分の給電範囲に作ることができず、北陸電力の給電範囲である福井県若狭湾に林立させ、長大な送電線を敷いて、関西圏に電気を送ってきたのでした。
  日本の遅れた核=原子力技術
          略
  福島事故で起きたこと
 起きたことはいたって単純です。発電所が全所停電したことで、私たちはそれを「ブラックアウト」と呼び、原発で破局的事故を引き起こす最大の要因であると警告してきました。

 原発とはウランの核分裂反応で発生するエネルギーでお湯を沸かして発電する装置です。しかし、実際には、原子炉内で発生しているエネルギーには 2種類あります。その一つが核分裂のエネルギーですが、もう一つが「崩壊熱」と呼ばれるエネルギーで、ウランの核分裂によって生み出された核分裂生成物と呼ばれる放射性物質そのものが出すエネルギーです。原発が長期間運転された場合、原子炉内で発生しているエネルギーの7%分は、「崩壊熱」です。今回地震が発生した時に、原子炉内には制御棒が挿入され、ウランの核分裂反応自体は止められたものと思います。しかし、崩壊熱はそこに放射性物質自体が存在する限り、止めることはできません。

 皆さんが自動車を運転中にタイヤが外れる事故が起きたとしましょう。もちろんブレーキを踏む、エンジンを切ることによって、車を停止させることができます。しかし、こと原発の場合には、事故が起きても7%分のエネルギーは止めることができないまま、走り続けなければいけないのです。

 原子炉の中で発生するエネルギー(熱)を冷やすためには、水を送らなければいけません。水を送るためにはポンプが動かなければいけません。ポンプを動かすためには、電気がなければいけません。しかし、福島原発の事故では一切の電源が断たれてしまったのでした。原発が運転中なら自分で電気を起こすことができます。しかし、地震で原子炉を停止させたため、自分で電気を起こすことはできなくなりました。通常なら、外部から送電線を通して電気を得ることができますが、地震によって送電線が被害を受け、外部からの電気もたたれてしまいました。そのために、発電所には非常用発電機が複数用意されていましたが、それらは津波でやられてしまいました。こうしてすべての電源が断たれてしまい、東京電力は多数の電源車を現場に集めましたが、電源車を構内の電力系統に接続する場所は水没してしまっていて、電源車も使えませんでした。こうなれば、原子炉は溶けるしかありません。東京電力は、思案の挙句、消防用のポンプ車を連れてきて、原子炉内に水を送る決断をしました。それも、真水が利用できなかったため、海水を原子炉の中に入れることになりました。原子炉内に一海水を入れてしまえば、その原子炉は 2度と使えません。そのため、この決断は福島原発の主島にはできず、東京電力社長の決断を待たねばなりませんでした。そして、その間にも原子炉の損傷は進んでしまいました。
 
  今現在、福島事故で進行していること
 私は、当初、この事故が破局に至るか安定化できるかは 1週間で決まると思っていました。しかし、その予想は全く外れ、事故後すでに 1ヵ月半以上経た現在もなお苦闘が続いています。原子炉はいまだに溶け落ちていませんが、冷却を続けない限り溶け落ちて破局に至る可能性が今でもあります。従ってやるべきことはただ一つ、原子炉に水を入れ続けることです。ただ、事故後ずっと続けてきたように、外部から水を入れる限り、入れた分は外に溢れてくることになります。その水は放射能で汚染した水であり、発電所の敷地内のあちこちに溜まってしまい、作業員を被曝させ、環境に漏れ出ていっています。

 すでにその水が 7万トン近くに達し、処理の方策が見えません。何とか、こうした外部からの水で原子炉を冷やす方策から抜け出さねばいけませんし、そのためには原子炉を冷やす水を循環式にし、途中に熱交換器を設置して、熱だけを環境に捨てるようにしなければいけません。そのためには大掛かりな工事が必要です。そしてそれができるまでは、今まで通り外部から水を入れ続けなければいけませんが、それを続ける限り汚染水があふれてきて、工事を妨害します。

 行くも地獄、帰るも地獄の膠着状態の中で、作業員は必死の作業を続けていますが、彼らの被曝はどんどんと蓄積してきています。もともと、日本人は 1年間に 1ミリシーベルト以上の被曝をしてはいけないことになっています。私のように放射線を取り扱って給料を得ている人間は「放射線業務従事者」と呼ばれて、1年間に 20ミリシーベルトまでの被曝は我慢するよう法律で定められています。しかし、今回のような異常事態になってしまえば、そんな限度を守ることはできず、事態に対処する為に、 100ミリシーベルトまでの被曝は我慢するようにとの法律の定めもありました。しかし、それすら守ることができず、その限度は一気に 250ミリシーベルトへと引き上げられ、おそらく今後 500ミリシーベルトまで引き上げられてしまうのではないかと私は危惧しています。それでも、事故に立ち向かうための作業員を確保できるかどうか、私には分かりません。
 
  福島事故の今後のシナリオ
 今後の展開を予測することはできません。私の最悪シナリオは、原子炉の冷却に失敗し、炉心の大部分が溶けて落ちる、いわゆるメルトダウンが起きることです。そして、その時に原子炉圧力容器と呼ばれる、炉心を格納している巨大な圧力がまの底に水が残っていると水蒸気爆発と呼ばれる爆発が起きる可能性があります。そうなれば、原子炉圧力容器を格納している、放射能を閉じ込める最後の防壁であるか原子炉格納容器も壊れるはずだと思います。そうなってしまえば、炉心は溶けている、圧力容器も破壊され、格納容器も破壊されているということで、原子炉の中に存在していた大量の放射性物質が何らの防壁もないまま環境に出てくることになります。何とか、その最悪シナリオを避けるために今現在、福島原発で作業員の苦闘が続いています。その苦闘が実を結んでくれることを私は願います。

 ただ、作業員の苦闘が実を結ぶ場合でも、彼らの被曝は避けられませんし、すでに環境に放出され、そして今後長期間にわたって環境に漏れ出てくる放射能によって一般の人々が被ばくすることも避けられません。すでに原子力安全委員会は、普通の人々の被曝限度を 1年間に 20ミリシーベルトに引き上げるとしています。
 
  低線量被曝の影響
          略
  子どもの被曝は何としても避けなければならない
          略 
  汚染への向き合い方
          略
Ⅳ.都会で引き受けられない危険
          略
Ⅴ.原子力からは簡単に足を洗える  
          略
Ⅵ.何よりも必要なことはエネルギー消費を抑えること
          略
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
http://chikyuza.net/n/archives/9063

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2344

Trending Articles