衆院で、「テロ非難」決議が行われたようですが、「テロ」を増やすだけでは?
以下、2月4日の武田先生の゛ログより。
武田邦彦(中部大学)
2015年02月04日
(ニュース解説)テロを防ぐ具体的方法・・・アメリカの本当の気持ち
「テロを憎む」とか「テロは許せない」と言われます。あまりにも当然で、こんなことを20年も言っているのだから、テロを無くそうとはしていないことは明らかです。人というのは本当に目前のことを解決しようとすると、必死にその「方法」を考えます。
「食べていけない」というとその社会に文句を言う先に、ともかく就職先を探しますし、子供の成績を上げようとすると「どうしたら成績が上がるだろうか」と考えます。
つまり単に「テロを憎む」と20年も言っている状態というのは、「本当はテロをなくしたくないけれど、表面的にはできるだけ強く言っておいて、裏ではテロが発生するように行動する」ということだからです。
アメリカは巨大な軍事産業と闇の資金を抱えていて、「常に戦争をしなければ国家が成り立たない」という状態にあります。そのために、すでに戦争が終わって70年を経るのにまだ日本や韓国に多くの軍隊を駐留させています。
第二次世界大戦後も、ベトナム戦争、キューバ危機、アフリカ紛争、アフガニスタン、そして中東と限りなく戦争を続けています。もちろん、アメリカにとっても若者を遠い異国に駐留させ、あるいは戦争になったらその命を奪うのですからデメリットもあります。でもそれを超えたメリットがあるからこそ、戦争を仕掛けるのです。
その典型的な例がフセイン大統領を絞首刑にしたイラク戦争でした。
遠因となったのは9.11のニューヨークのテロ事件ですが、まずは話をスッキリさせるために9.11から始めたいと思います。このテロの犯人がアルカイーダであり、首謀者がビンラディンであるとしてアフガニスタを攻めます。ここまでは問題はありますが、一応の筋は通っています。
しかし、当時のブッシュ大統領は国内事情と自らの支持率との関係で、どうしても戦争を拡大しなければなりませんでした。日本に住んでいて平和の中で人生を送っていると、わざわざ戦争したくないはずだという先入観がありますが、そんなことが本当なら、アメリカは自らの意思で戦争をやめることができるのですから、「お人好し」の議論をしているわけには行きません。
アメリカが常に考えていることは、どうしたら戦争のきっかけを作ることができるかということです。その一つが「フセイン大統領が大量破壊兵器を持っている」ということでした。戦争をしたくないなら、こんな大げさなウソをつく理由はありません。
でも、アメリカは今まで、インディアンとの戦い、スペインとの戦い、日本、そしてベトナムとの戦争でしたが、今では「テロを増やすための行動」をやっています。それが2014年(昨年)の夏にアメリカがイスラム国を空爆し、兵士6000人、民間人2000人も殺害しました。イスラム国の隣にアメリカがあるなら、まだ「自衛のため」といえますが、国連も無視して自分だけの判断で空爆をするのは「テロを増やしたい」からと考えられます。
表面で言っていることだけを考慮するような「子供のような日本人」から脱する必要があるでしょう。
(平成27年2月4日)
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以下、毎日新聞様より。
毎日新聞 2015年02月05日
シリア:避難高校生が「ジハードに」…数千人が行方不明も
◇トルコ南部の避難所、戻った男子高校生9割が死亡か不明
シリアと国境を接するトルコ南部キリスのシリア人避難所の高校で、男子高校生の9割近い280人が「ジハード(聖戦)に行く」と個別にシリアに戻り、死亡もしくは行方不明になっていることが避難所の高校教諭らの調査で分かった。イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)などの武装組織に入ったとみられる。米軍主導の有志国連合による空爆が拡大した昨年秋以降、シリア行きを希望する男子生徒は急増しており、トルコ全体では数千人規模のシリア人高校生が行方不明になっている可能性がある。【キリス(トルコ南部)で大治朋子】
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調査をしたのは避難所内の高校でアラビア語を担当するメレ・ユンソ教諭(44)ら。
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ユンソ教諭によれば、子どもたちは日ごろから「なぜ欧米は多数の市民を殺すアサド政権を攻撃せず、アサド政権より市民に信頼のあるISを攻撃するのか」などと、怒りを口にしている。ISはその残虐性で知られるが、彼らが信じるシャリア(イスラム法)を守り、敵対しない市民には危害を加えないため、理想化する若者も少なくない。
また、避難所の学校の教諭は135人いるが、これまでに若手の教諭15人がシリアに戻り、戦闘で死亡した。「教諭で集まると、いつも話題はシリアに残る家族や親戚らのことになる。誰もが避難所で安全に暮らしていることに後ろめたさを感じている」(ユンソ教諭)
同じキリスの避難所で高校教諭を務めていた男性(43)は「若者世代はシリアで11年に始まった反体制派運動に対するアサド政権の弾圧や市民殺害に強い怒りを抱いている。米軍主導の有志国連合による空爆がアサド政権ではなくISにのみ向けられ、失望したり反発したりしている」と話す。