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[転載]領土問題、争い続けるのか、妥協策を考えるのか

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 外交とは、妥協の産物であり、勝者の敗者もないものだと理解している。外交的に負けだの勝っただのと言うマスコミ受けする是非は、問題を複雑化させて、挙句に陳腐なナショナリズムを高揚させると言う悪循環に陥る。
 
 歴史を見れば明らかで、日露戦争勝利に沸いた我が国国内の世論を作り上げたのは、政府ではなく、マスコミである。この外交交渉に望んだのは、小村寿太郎である事は、歴史の教科書に載っている。彼は、勝利に沸く国民から見送られて、米国へ旅立った、しかし、仲介する米国も、どちらが勝者であるかと言う部分には触れず、交渉のテーブルも上下関係を否定するかのように船で行った。結果、あれだけの死傷者を出しながら、我が国が得たのは、樺太の南半分だけで賠償金など得る事はなかった、現実に日本政府には、これ以上戦い続ける余力など残されていなかったと言うのが事実、ロシア側は、ロシア革命が起こりつつあり内政に不安を残していた時代で、やはり長期に渡る戦争は、ありがたくないと考えていた。双方の弱点を付く形で、米国が斡旋し、戦争は終った。
 
 ナポレオンのロシア遠征の時もそうであったが、ロシアの戦い方は、領土の広さを利用した、敵国の兵站を引き伸ばす戦略で、戦っているかのように見せながら、奥地へと引き込み、敵国が、力尽きるのを待つと言うもので、ナポレオンもこの戦略に敗北した。日露戦争も同様で、奉天の大会戦と我が国の歴史書にな書かれているが、我が国陸軍の勝利とされている。
 
 しかし現実には、ロシア側は、殆ど戦わずして退却している。ロシア国内深くにわが国陸軍を誘い込むのが最初からの作戦である。
 
 203高地の攻防から、日本海海戦、奉天に至る我が国の局地戦での勝利は、時のマスコミによって大々的に報じられて、国の現実を全く斟酌しない世論を形成した。
 
 小村寿太郎は、帰国後、礫を持って迎えられたのと同様に国民からの徹底的な罵倒に見舞われる。
 
 外交に負けたとの世論がそれである。しかし、現実には、最早戦えない我が国と、ただ戦いを長引かせたくないロシアの利害が一致したと言うだけで、戦争に勝ったと言うには程遠い現実があったのである。
 
 外交とは、う言った妥協策の産物であると言うのが、この一件を見ても御理解いただけると思っている。
 
 現在、わが国は、竹島問題、尖閣諸島問題、北方四島問題に、沖ノ鳥島問題と領土、領海に関わる一種の紛争を抱えている。
 
 沖ノ鳥島問題?と思われる方もいると思うが、中国が、国連に、沖ノ鳥島は、島ではなく岩礁であると申請をしている。わが国は、これを島として、EEZをここから200海里と設定したが、この申請により、沖ノ鳥島の北側に関しては、わが国の主張を認める形で、EEZを認めたが、南側については、留保されている。つまり確定していないと言う事になる。
 
 尖閣諸島は、水の流れや、ヤギなどの生息も確認されているから、いくつかの島は、島として成立知る可能性が高いが、竹島は、実効支配している韓国には、気の毒だが、人工的に人間が生活できるように作り上げたと言う事を考えれば、もし国連海洋法に照らした場合、岩礁となる可能性も否定できない。もし岩礁となれば、この竹島からEEZは、認められず、領海の3海里だけになる。
 
 北方四島問題は、ヤルタ会談まで遡らねばならず、米国と英国に騙されたスターリンが、最終的に二島を連合国側から正式に譲り受けていると言うのが事実で、二島返還問題は、この事実を容認した上で我が国が妥協せざるを得ない状況であったと言うのが事実である。
 
 4島返還に拘ると、4島とも、返還されない可能性もあり、外交上のジレンマになっている。しかし、自民党政権もこの事実を国民に敢えて知らさずに、宣戦布告無しに終戦間際に参戦したソ連に対して大きな不信感を持ち、更に国際法上、大変に問題が多い、シベリア抑留問題と合間って、ロシア憎しと言う感情論を国民に与え続けたのは、我が国の歴史教育の間違いである。
 
 北朝鮮や、韓国、中国の歴史教科書が、相当に偏向した教育であると批判する人も多いのだが、わが国に於いても不都合な真実に関しては、出来るだけ国民に知らししめないとした国定教科書が存在している。確かにそれらの国々より、偏向性は少ないが、やはり、国定教科書に負の部分が歴史などには色濃く出てしまうものである。これは、我が国だけでなく、欧州でもナポレオンはフランスでは英雄であるが、隣国にとってそれは、単なる侵略者でしかない。
 
 これは致し方ないもので、その感情的な理解を否定する事は、人間が感情の動物である限り、避けては通れない史学上のジレンマでもある。
 
 我が国が抱える、領土、領海問題は、我が国の地政学上の大きな弱点となっている。孫崎享氏は、「戦後政治の正体」の中で、米国が我が国に残した外交上の負であり、それは敢えて我が国を米国一辺倒の安全保障から抜け出せない為の謀略であると切り捨てている。
 
 この占領地の独立を容認する時に占領国は、必ず、この国境線上の負の遺産を敢えて残すと言う、英国がそうであったとの事、インドが独立する時に敢えて、西と東にパキスタンを配置した事や、東南アジア諸国の国境線を敢えて複雑にして、必ず、国境問題が引き起こるようにしていると言う。この戦略を、我が国に対して米国が残したのが、この領土、領海問題であるとしている。
 
 逆に考えれば、もし、この領土問題をある程度、妥協して解決し、隣国との緊張関係を打破できれば、わが国は、地政学上相当に有利になると言う事になる。
 
 関西の商人が「損して得取れ」と言うが、外交は、そう言った妥協点の導き方で損も得もすると言うことになる。
 
 実効支配している尖閣諸島は、これ以上相手国、中国や台湾に主張されない様に、徹底した国際世論への働きかけと、実効支配を強める施設などの建設を実行し、常駐する海保や海自などを配置するだけで充分と思う。当初は、中国国内世論が沸騰するだろうが、それが何年も続く事はまず無い、精々、半年から1年であろう。その間、日本商品の不買運動やデモなどが起こるだろうが、この運動の正体は、どちらかと言えば、国内の不平不満が、日本と言う外側に向かっているだけで、問題視するほどのものではない、中国共産党政権は、最後の力を振り絞り、押さえ込む事になると思っている。
 
 竹島問題は、実効支配されており、これを国際世論にどう訴えても、まず返還される可能性は殆どない、この小さな島(岩礁)に拘って、隣国であり、同じ資本主義国家である韓国との関係が緊張を延々と続ける方が、遥かに我が国の国益を損なう事になる。先にも述べたが、これを島とせずに、岩として、国連海洋法に則っる国際世論の形成を計るべきだと思っている。負けて勝つと言う状況を作る努力をすべきだろうと思っている。
 
 さて一番、問題なのが、北方四島であり、我々国民が政府から与えられている情報は、ロシアが不法に占拠しているとした教育、終戦間際に日ソ不可侵条約を一方的に破棄して、参戦した事や、シベリア抑留などを取り上げて、教育されている為に、我が国国民の大半は、歴史的な事実について教育として与えられていない。これが感情を刺激して、ロシアは信じるに値しない国としての認識が、感情論に火をつけてしまうのである。
 
 しかし、まず日ソ不可侵条約だが、そうなると三国同盟との問題と矛盾する。三国同盟を結んだドイツは、ソ連に侵攻しており、その折に、スイスの日本大使館にソ連の大使が、ドイツのと仲介を依頼した事実や、その依頼を、無視して我が国政府は、答えを留保したまま3年間、全く外交上の仲介をしてない。つまり、日ソ不可侵条約は、三国同盟を得て、ドイツがソ連侵攻を始めた事を容認した結果、破棄されたと看做されても致し方ないとする解釈も存在する。
 
 さらに、ソ連参戦だが、これは、スターリンが考えた事ではなく、ヤルタ会談んで米軍が本土決戦を回避させる為に、ソ連を騙して参戦を促したのが発端で、この終戦間際のソ連参戦を批判するならヤルタ会談そのものを批判すべきで、その時に、北方四島などをソ連に割譲すると勝手に約束したのは米国であり英国である。そうなると恨むべき相手は、ソ連以上に米国であり英国ということになろう。
 
 ソ連が社会主義国家であり、後に冷戦状態になった事もあって、我が国の教育は徹底した、ソ連バッシング一色になったと言うのが事実である。
 
 つまり、ロシアにとって、北方四島は戦利品でしかないと言う意味である。二島返還でも行われれば、外交上、成功だと思わねばなるまい。更に、米軍が我が国に駐留している限り、ロシアは、この地域のインセンティブの根拠として北方四島を手放す可能性は殆どあるまい。
 
 これらの事実を繋ぎ合わせれば、このままこの領土問題を緊張したままで今後、何十年、あるいは一世紀も続けるのか、何か起こるたびに引き起こる反日運動や、外交カードとなる負をどうするのか、誰も答えていない。
 
 勇猛果敢な論議は、それはそれで、国民の琴線に触れる為に、ナショナリズムを高揚させるのだが、この陳腐なナショナリズムの為に、どれだけの国益を損ない続けるのかと言う疑問にも答えられないだろう。
 
 外交とは、妥協の産物であり、勝敗など存在しない、ただ互いにどちらが有利か不利かと言う国益だけに留まるのである。
 
 小生は、この緊張関係を続ける限り、特に竹島と北方四島問題は、却って我が国の国益を大きく損なうと思っている。
 
 尖閣諸島問題は、我が国の覚悟を、はっきりと中国世論に訴える実効策を採るだけで、沈静化すると思っている。

転載元: 公平と言うこと


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